夢のコラボ 秦郁彦氏と古森義久氏の対談


『WiLL』2007年10月号で、秦郁彦先生と古森義久記者が対談している。

秦郁彦vs古森義久 マイクホンダは中国の”慰安婦”だ』


対談記事のタイトルも激しく扇情的だが、内容もなかなかにぶっ飛んでいる。小見出しを書き出し、特にぶっ飛んだ部分を引用して紹介する。(注と強調は引用者による)


戦うトルコ政府

米、ネット論壇でも

秦 アメリカで慰安婦決議の問題が起こってから、私は『諸君!』の5月号に掲載された(『WiLL』の8月号増刊に転載)の論文を英文に訳して数百部刷ってもらい、4月中に下院議員や駐日大使、アメリカの大学のジャパノロジスト(日本研究者)たちに送ったんです。
 文末に「疑問の点があればお問い合わせ下さい」と書き添えておいたので当然問い合わせがくるかと思ったんですが、未だゼロ。一通もきません。ナシのつぶてかと思うとなんとも虚しくなる。


古森 しかし、それは何もインパクトがなかったってことではないと思いますよ。・・・・・・
   (略)
 今回、採択された対日非難決議の翌日に「同盟国として日本は大切だ」なんて決議を成立させたのも反論の賜物ですよ。・・・・・・


(219〜220ページ)

古森 議会から一部、資金が出ているNBRという民間のアジア研究団体に日本部門があり、日本に関するネット論壇があるんです。・・・・・・秦先生の論文も話題になっていますよ。


秦 悪口書かれてるんじゃないでしょうか(笑)


古森 いや秦先生は、有名で信頼度が高い。・・・
・・・アメリカ人の歴史学者のアール・キンモンス氏はそのネット論壇で「日本の性慰安婦をセックス・スレイプ(性的奴隷)と談じるのはおかしい」と主張しています。アングロサクソンにおける「スレイブ」と日本の慰安婦の状況を比較したのです。・・・・・・相違点を10項目挙げて、慰安婦を「奴隷」と呼ぶのは不適切だと主張しています


秦 今回の決議案でさすがに「性奴隷」という文言は削除するのではないかと思いましたが、最後まで残りましたね。先進国で最近まで奴隷制が残っていたのはアメリカですから「性奴隷」のイメージが簡単に受け入れられるんでしょう。


古森 アメリカの公共放送PBSに『ニューズウィーク』のベテラン記者のファリード・ザカリア氏が司会する番組があります。私はそこに招かれ、慰安婦問題について30分ほど意見を述べる機会を得ました。
(略)
私は慰安婦非難決議に関しても「二重訴追と二重基準レイシズム(人種差別)だ」と反論*1しておきました。


(220〜221ページ)

編集部 「慰安婦はどこの国にでもいる」とか「ベトナムのこと*2アメリカ人だって人のことを言えた筋合いか」と言ってる人は?


古森 それはあまりいませんね。


秦 「俺たちもやってたけど、日本の方がひどかったじゃないか」と言うのならまだしも、「こちらは潔白。日本の場合は性奴隷」という考え方はどうしても納得がいきません。


(222ページ)

意見広告への反発

秦 日本側の意見広告*3について不快感を示した人はいても、「ここは事実と違う」と具体的に反論する人はほとんどいない。ということは「決議する予定が決まっているのに邪魔をするな」という怒りだけでしょうね。


古森 秦先生のその表現が一番適切でしょうね。日本人が何かを言い返すこと自体、相手にとってはけしからんのでしょう。まさにレイシズムがひそんでいる。


(223ページ)

アイリス・チャンとの対決

古森 ・・・平成10年に一度だけ、当時の斉藤邦彦駐米大使が例の『レイプ・オブ・南京』の著者アイリス・チャン女史とテレビ討論した。しかしあまり効果はありませんでした。斉藤氏がそういう場に出ることを決めた勇気は賞賛されるべきですけど。


秦 中継を見ていた人によると、最初に二人の顔が並んだ時点で勝負ありだったそうですね。片や老齢の大使、片や若い女性ジャーナリスト。悪役と美女の構図になってしまったと。こういう時は同年代の女性外交官を差し向けるべきでしょう。


(225ページ)

反日団体に絡めとられて

救いようのない吉見教授

秦 日本の左翼グループはこのところ方針転換をしたようです。日本のマスコミはあきらめて、もっぱら海外のマスコミにアピールしてますね。


編集部 日本国内でやっても、事実関係は秦先生に論破されてしまいますからね。『WiLL』でも再三、彼らに取材の申し込みをしているんですが断られてます。

(略)

秦 また吉見氏は、強制連行を証拠立てる資料がみつからないのは「資料は全て焼いたからだ*4」と今頃になって言い出す*5始末で「8月15日は資料を焼く煙で東京の空が暗くなった」という話を真に受けたニューヨーク・タイムズの東京支局長は興奮した筆致で報道していました。

 しかしそもそも彼が1992年にカムアウトしてきたきっかけは朝日新聞が報じた「防衛研究図書館で慰安婦に関する資料を発見した」ことでした。この史料*6は多くの研究者が既に知っていた内容*7のものですが、中身は当時の陸軍省が出先の業者が乱暴な集め方をしないように取り締まれと指示する内容だったのに、新聞が1面トップで世紀の大犯罪があったかのように宣伝したのです。

(略)

 吉見氏も元来は実証的な歴史家でしたから、最初はかなりまともだったのですが、運動にのめりこんだせいか、ついに救いようのないところまで来たな、と思いますね。


(225ページ)

デタラメを書く海外の報道

古森 秦先生のところには海外から取材依頼はあるんですか?


秦 今度に限って、海外メディアは一切寄ってきません。電話すらかかってこない。昔はアメリカの新聞は両論併記が原則で日本の新聞も見習うべきだと言われていた。しかし最近のアメリカの新聞報道はひどいですね。


古森 アメリカの大手新聞は慰安婦決議に関しても偉そうにデタラメを書いていました。日本人全体をひとくくりにして「日本人はそもそも自国の歴史に関して健忘症あるいは記憶喪失*8』なのだ」という調子の日本人のDNA*9について断じる論調です。人種偏見とさえ言えます。腹が立ちます。


(228ページ)

左翼勢力の団結力

秦 ・・・「米国は下院本会議で対日謝罪要求決議を採択した。いずれ中国から具体的な事例を添えて謝罪要求が出てくると思っていたほうがいい*10
 これは新聞記者が書く文章ではなくて、運動家や活動家のアジ文です。近々大騒ぎにするぞと予告しているのかもしれない。要注意です。


古森 毎日新聞は読む機会が少ないので気づきませんでした。その記者*11は私は直接は知らないけれども、左翼の親中派だとされているようですね。


秦 ・・・・・・左翼陣営のほうは採算を度外視してもでも翻訳出版する。したがって海外には左翼の英訳本ばかりが流れていく。
 内通者がいると戦争に勝てませんが、公然と国を売る「外通者」がいれば必ず負けます。アメリカではこんな連中は村八分になりますが、日本ではむしろほめられて有名になる。だから後継者も続く。右派はそのあたりは全くダメなんです。


(230〜231ページ)

放火魔か愉快犯か

またぞろ出てくる決議案

秦 ・・・・・・・
 アイリス・チャンも次は「バターン死の行進」を書く予定で、自殺したのは取材の途中でした。この本がもし出ていたら、『レイプ・オブ・南京』どころの騒ぎではない。捕虜収容所まで歩いていく途中でアメリカ人やフィリピン人が多数死んでいますから。もっとも「なぜ捕虜を車に乗せなかったんだ」と非難されても、護衛の日本兵も歩いていた。日本の兵隊は歩くのが文化なんです。
 今の日本人の若者が聞いても理解できないような文化的差異を、時代も国も違う人間が理解するのは難しい。だから時効という制度は人類の知恵なんです。


(223ページ)

 

永久に日本を非難する

古森 非難決議が可決された直後の記者会見で、ホンダ議員はこの中国系団体、抗日連合会*12の名を挙げて謝意を述べていました。
(略)
・・・ホンダ議員は最後の最後まで抗日連合会との関係については沈黙を保っていました。そして決議案が採択されるや否や、抗日連合会への最大の謝辞と賛辞を表明しました。「わたしが中国政府から命令されてこの活動をやっているという非難がありますが、とんでもない。ここはアメリカだ」と聞かれてもいないのに答えています。


編集部 墓穴を掘ってますね。


秦 裏付けになる情報は日本の吉見グループなどが提供していますから、反日工作の参謀本部は日本にあるといってもよいかもしれません。


(233〜224ページ)

南京事件も抗日連合会が

秦 『レイプ・オブ・南京』の元締めもこの団体ですよね。アイリス・チャンはまさに「雇われマダム」。
彼女が主導的にあの本を書いたならありえないような、雑なつくりになっているのは操り人形だったからでしょう。それがその後に作られる本や映画のお手本になっているのだから困りものです。


古森 大学のテキストとして使っているところもありますからね。
 彼女が自殺したことによって「日本の右翼に攻撃されて失意のうちに亡くなった悲劇のヒロイン」というイメージになってしまった。日本ではあの本はデタラメだというは周知の事実*13ですが、アメリカではおおっぴらには言われていない。
 アジア系の若い女性の活動を正面から否定することはポリティカリー・インコレクト(politically incorrect、政治的に正しくない)とされるので、なかなか反論できないんです。慰安婦問題だって「可哀相な、高齢の女性たち」となれば、批判しずらい。


(235ページ)

舞台を移した反日劇場



悪夢じゃあぁぁぁ

*1:'That’s our feeling you know--they’re nitpicking and I think the essence of this issue from the Japanese perspective is double-jeopardy, double-standards, and a tinge of racism.'と唐突に言っただけ。

*2:秦先生が Susan Brownmillerの"Against Our Will"から引用したベトナム戦争時の米軍キャンプにあった軍売春施設のこと

*3:ワシントンポストに掲載された"THE FACTS"のこと

*4:秦先生自身も『・・・日本陸軍は・・・終戦の日に重要書類の大部分を燃やした』と、自著『慰安婦と戦場の性』、177ページに書いている。

*5:『世界』2007年5月号の吉見論文

*6:陸支密大日記

*7:陸支密第七四五号

*8:amnesia - 【医】 健忘(症), 記憶消失[喪失]; 自分に不都合なことを無視する[見落とす]こと.(研究社『リーダーズ+プラスV2)。健忘症とか記憶喪失と訳した日本語記事もあった。これは確かに無神経だと思う

*9:historical amnesiaなどという病名はないので、当然、DNAも関係ない

*10:2007年8月2日付け毎日新聞夕刊 『母を一生世話する心』

*11:金子秀敏専門編集委員

*12:世界抗日戦争史実維護連合会

*13:日本語版が出なかったので、読んだ日本人は多くないのに断定的な評価できないでしょう