慰安婦問題も後継総理に丸投げ?


M. Evelina Galangさんは、フィリピンの元慰安婦に対する日本政府の謝罪を求め精力的に活動をしている。彼女のブログ FRIENDS OF LOLAS には、フィリピン下院で出された下院決議の案文なども出ている。彼女が安倍首相の辞任に対して短い記事を投稿されていたので、訳*1して紹介します。


On the Resignation of Prime Minister Shinzo Abe (Friday, September 14, 2007)

Prime Minister Shinzo Abe had the opportunity to make history and do the right and noble thing for the 200,000 surviving “Comfort Women” of WWII. But he was stubborn and he missed his chance. It’s a shame, I think. A shame that he didn’t seize the moment. Now it’s too late and he will be remembered as the Prime Minister of Japan who perpetuated the indignities and crimes against humanity, against old ladies whose only mission was to be heard, to be respected and to be apologized to, whose only desire was to stop this crime against humanity from recurring again. I feel for him, for now he has to live with that.

Posted by m. evelina galang



安倍晋三首相の辞任について

安倍晋三首相には、第二次世界大戦で「慰安婦」としての生活を余儀なくされた20万人に対して正しく崇高な行いをなし、歴史に名を残すチャンスがあった。しかし、安倍首相は頑迷さのあまり、そのチャンスを逃してしまった。もったいないと思う。せっかくの好機を掴めなかったのは実にもったいない。しかし今となっては「覆水盆に返らず」である。安倍首相は歴史にその名を刻むであろう。人道に対する侮辱と人道に反する犯罪を温存させてしまった日本の首相として、慰安婦という人道に反する犯罪が二度と起きないこと、ただそれだけを願っている年老いた女性たちの切なる声を聞こうともせず、尊重することもせず、謝罪することもしないどころか、彼女たちへの侮辱や冒涜を断罪しなかった日本の首相として・・・。わたしは安倍首相に同情を禁じえない。彼は一生その汚名を背負って生きていかなければならないのだから。


ネジクレ愛国さんが激怒しそうな内容だが、安倍総理がこの3月に慰安婦の証言は客観的事実に基づいていないと妄言を吐き、彼女たちを侮辱したことは明らかである。アメリカ下院でH. Res. 121が全会一致で可決されたときこそが、安倍首相が自分自身の手で、汚名を返上し、元慰安婦への侮辱を謝罪し、和解の道を歩む最大の好機であったことも確かだ。彼がするべきことは、河野談話を継承すると明言することではなく、真摯に謝罪することだったのだと思うし、それを世界中の多くの人が望んでいたと思う。世界広しといえども、それができるのは安倍首相ただ一人だった。


なお、産経新聞古森義久記者が「慰安婦決議推進の真の主役」とする「世界抗日戦争史実維護連合会(Global Alliance for Preserving the History of WWII in Asia)」のHPには特にコメントは出ていないし、"121 Coalition"は、朝日新聞ニューヨーク・タイムズの記事をそのまま貼り付けているだけである。

これに関して、古森記者のヨタぶりを示すものとして、H. Res. 121の可決までの道のりを書いた、徳留絹枝氏の「慰安婦」決議採択-米議会と日本の歴史問題 *2がある。

「121連合」には中国系活動組織も加わったが、必ずしも歩調が合った訳ではない、とパクさんは言う。


「私たちはGA(The Global Alliance for Preserving the History of WW II in Asia )のメンバーと協力し合おうとしましたが、彼らはそれほど親密なパートナーではありませんでした。決議案を通過させたいという目標は同じでしたが、活動のスタイルとメッセージに大きな違いがあり、そのことが効果的に一緒に活動することを妨げたのです。彼らは(GA幹部の)イグネーシャス・ディング氏が「強硬戦術」と呼ぶ戦術を取りたがっていましたが、私たちはそのような戦術には興味がありませんでした。『121連合』は、手紙戦術・署名運動・議員やそのスタッフとの面談といった、全く伝統的な草の根運動によるロビー活動に徹していました。私たちはこのやり方で167人の共同提案者を確保したのです。GAは、このような時間のかかる地道な活動には、あまり興味を示しませんでした。


小森記者は、ワシントンにいるのに、何にもわかっちゃいないのである。彼に言わせれば、徳留氏の記事に出てくる"Asian Policy Point"の代表 Mindy Kotlerさんも「反日活動家」らしいが、何でも「反日」さえ認定すれば「日本は正しい」ことになると本気で思っているのだろうか?だとすれば、果てしなく浅はかであるし、記者としての情報収集能力も枯渇してしまったとしかいいようがない(誤訳ばっかするし(笑))。


*注)英語原文("Passage of H.Res. 121 on “Comfort Women”, the US Congress and Historical Memory in Japan", Japan Focus)。徳留絹枝氏が開いているサイト「捕虜 日米の対話」は、「バターン死の行進」や「地獄船」など旧日本軍の捕虜虐待についてその悲惨な実態がよくわかるサイトである。


(追加関連ニュース)
Comfortably Numb (Miami News Times - August 30, 2007)
http://www.miaminewtimes.com/2007-08-30/news/comfortably-numb/

M. Evelina Galangさんへのインタービューを交えた慰安婦についての英文記事。

*1:Stiffmuscleのへなちょこ訳

*2:注)参照