Do the right thing, Japan!


フィリピン下院外交委員会の『慰安婦』決議採択のニュースにふれ、国連のこれまでの動きを調べているうちに、『アジア女性基金』のHPにたどり着き、気になるページが目にとまった。

慰安婦」訴訟の経緯 (アジア女性基金

http://www.awf.or.jp/4/lawsuit.html

1991年を皮切りに、アジア女性基金が償い事業を行った韓国、フィリピン、台湾の元慰安婦が原告となった訴訟が次々と始まりました。いずれも東京高裁、最高裁へと進みましたが、最終的に補償の請求は退けられました。


1. アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求訴訟 1991年提訴
最高裁判決 2004年11月29日
http://www.awf.or.jp/pdf/195-k3.pdf

理由


(2)いわゆる軍隊慰安婦関係の上告人らが被った損失は、憲法の施行前の行為によって生じたものであるから、憲法29 条3 項が適用されないことは明らかである。したがって、軍隊慰安婦関係の上告人らの論旨は、その前提を欠き、採用することができない。


2 同第1 の2 のうち憲法の平等原則に基づく補償請求に係る部分について財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40 年条約第27 号)の締結後,旧日本軍の軍人軍属又はその遺族であったが日本国との平和条約により日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人に対して何らかの措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2 項、恩給法9 条1 項3 号の各規定を存置したことが憲法14 条1 項に違反するということができないことは、当裁判所の大法廷判決最高裁昭和37 年(オ)第1472 号 同39 年8 月27 日大法廷判決・民集18 巻4 号676 頁、最高裁昭和37年(あ)第927 号同39 年11 月18 日大法廷判決・刑集18 巻9 号579 頁等)の趣旨に徹して明らかである最高裁平成10 年(行ツ)第313 号同13 年4 月5 日第一小法廷判決・裁判集民事202 号1 頁、前掲平成13 年11 月16 日第二小法廷判決・最高裁平成12 年(行ツ)第191 号同14 年7 月18 日第一小法廷判決・裁判集民事206 号833 頁参照)。したがって、論旨は採用することができない。


3 同第1 の2 のうち、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に射する法律(昭和40 年法律第144 号)の憲法17 条、29 条2 項、3項違反をいう部分について第二次世界大戦の敗戦に伴う国家間の財産処理といった事項は,本来憲法の予定しないところであり、そのための処理に関して損害が生じたとしても、その損害に対する補償は、戦争損害と同様に憲法の予想しないものというべきであるとするのが、当裁判所の判例の趣旨とするところである(前掲昭和43 年11 月27 日大法廷判決)。したがって、上記法律が憲法の上記各条項に違反するということはできず、論旨は採用することができない(最高裁平成12 年(オ)第1434 号平成13 年11 月22 日第一小法廷判決・裁判集民事203 号613 頁参照)。


(強調は引用者による)


はぁ?あんたらが判断を避けるために憲法の条文や判例があるわけじゃなかろうが!
最高裁が正義を貫かなかったら民主主義が存続、浸透するわけがないだろうが!*1

憲法の前文を読め!

日本国憲法
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/nihonkokukenpou.htm


日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。


 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する


 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。


 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。



The Constitution of Japan
http://www.sangiin.go.jp/eng/law/tcoj/index.htm


We, the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peaceful cooperation with all nations and the blessings of liberty throughout this land, and resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution. Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people. This is a universal principle of mankind upon which this Constitution is founded. We reject and revoke all constitutions, laws, ordinances, and rescripts in conflict herewith.


We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want.


We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations.


We, the Japanese people, pledge our national honor to accomplish these high ideals and purposes with all our resources.


(強調は引用者による)


日本国憲法の「国民」という表現は極めて時代錯誤的なので、ぜひ改訂するべきだが、それを除けば、この憲法はなかなか優れものである。特に、憲法9条は変えるべきではない。

防衛省自衛隊なんちゅうもんが出来てるが、憲法改正せずに、憲法違反の軍を創設するからややこしいのである。due processちゅう概念は、司法ばかりでなく、立法機関にもないらしい。


話は前後するが、上記最高裁判決に出てきた日本国憲法の条文を日本語原文と参議院HPの英訳で挙げておく。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

Article 29. The right to own or to hold property is inviolable.
Property rights shall be defined by law, in conformity with the public welfare.
Private property may be taken for public use upon just compensation therefor.


第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

Article 14. All of the people are equal under the law and there shall be no discrimination in political, economic or social relations because of race, creed, sex, social status or family origin.


第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

Article 17. Every person may sue for redress as provided by law from the State or a public entity, in case he has suffered damage through illegal act of any public official.


ちなみに、『公共の福祉』というのもわけがわからない表現である。英文では"public welfare"という訳語が当てられている。『公共の福祉』じゃなくて、『公共善(共通善)』、英語で言えば"commonweal" とか"common good"って意味なんじゃないかと思うんだが、どうでしょうか?
ようするに、『てめぇのことばっかり考えるな。周りの人がしあわせになるように自分の権利を使え』 ってことなんじゃないかと。


悲しいことに、国土交通省からして、偏った使い方をしているし、

個人の土地が公共の福祉(道路整備、河川の整備など)のために必要な場合は、正当な補償を行うことで公共のために用いることが出来ます。


公共の福祉と私有財産国土交通省北陸地方整備局
http://www.hrr.mlit.go.jp/youchi/koukyo.html


辞書も誤解をまねくような定義をしてるし、

こうきょう‐の‐ふくし【公共の福祉】 (大辞泉
社会全体に共通する幸福・利益。基本的人権と矛盾することがあり、その調和が問題とされる。


こうきょうのふくし 【公共の福祉】 (大辞林
社会一般に共通する幸福や利益。個人の利益や権利に対立ないしは矛盾する場合があり、相互の調和が問題とされる。


Yahoo! 辞書
http://dic.yahoo.co.jp/


こうきょうのふくし 【公共の福祉】 (広辞苑第六版)*2
社会構成員全体の共通の利益。基本的人権との調和が問題にされる。


検索した中では、この人の説明が一番わかりやすかった。

#310 続・「公共の福祉」とは? 2007-05-19 号

寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
http://www.mammo.tv/column/ken_terawaki/20070519.html

わたしたちひとりひとりの自由や権利と「公共の福祉」は、対立する概念ではありません。個人の自由や権利が、全体の利益によって制限されるわけではないのです。「公共の福祉」は、「全体の利益」と同義語ではありません。

(中略)

自由は大事。権利も大事。けれどそれが、公共の福祉=自分を含めた社会をよくすることに向かっていなければなりません。


(強調は引用者による)


元『慰安婦』の方で、幸せな人生を全うされた方が何人おられるだろう?存命中の元『慰安婦』の方たちは何を願っておられるのだろう?彼女たちの願いをかなえるためにわたしたちはどんな権利を使えばよいのだろう?

   

*1:今頃、腹たててる私もなんだが・・・

*2:2008年3月24日追記