文書公開のお願い
秦郁彦氏、尾形美明氏、加瀬英明氏に対し、" Composite Report on three Korean Navy Civilians List No. 78, dated 28 March 1945, "Special Questions on Koreans" (U.S. National Archives)というタイトルのついた文書の公開を切望する。
お願いにいたるまでの経緯
秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』(1999年、新潮選書)において、秦先生は、官憲が「強制連行」するはずがないとする主張の根拠を、米国国立公文書館(National Archives and Records Administration、以下NARA)にあるという文書に求めている。そのくだりを引用してみる。
いずれにせよ、平時と同じ身売り方式で女性集めが可能なら、植民地統治が崩壊しかねないリスクをはらむ「強制連行」に官憲が乗り出すはずはないと考えられる。
それを裏書するのは、四十四年夏、テニアン島で米軍の捕虜になったリー・パクドら三人の朝鮮人による陳述である。「面長は自由選挙でえらばれた指導力のある実力派の老人」とか「労務動員を拒否すると投獄される」と語ったあと、朝鮮人慰安婦について次のように述べている。(10)
太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦 (prostitutes) は、すべて志願者 (volunteer)か、両親に売られた者ばかりである。もし女性たちを強制動員 (direct conscription)すれば、老若問わず朝鮮人は憤怒して立ちあがり、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう。
尋問官が「今まで尋問した百人ばかりの朝鮮人捕虜と同じく、反日感情が強い」と評している朝鮮人軍属の証言だけに、何よりも説得力を持つのではあるまいか。
(10) Composite Report on three Korean Navy Civilians List No. 78, dated 28 March 1945, "Special Questions on Koreans" (U.S. National Archives).
秦先生の他にも、この文書を引用し、強制連行がなかったことの傍証とする論がある。
The Truth about the Question of “Comfort Women”
http://www.sdh-fact.com/CL02_1/24_S5.txtOgata Yoshiaki
Additionally, in 1945, in depositions of three Korean civilians in the employment of the Japanese Army, they stated “In the battle zones of the Pacific War, the Korean comfort women we met were all either volunteers, or women who had been sold by their parents. If any of the women had been victims of coercion, all Koreans, young and old, would have risen up in rage, regardless of whatever retaliation, and killed the Japanese.”
This is taken from “Composite Report Three Korean Civilians List No. 78,” dated 28 March, 1945, “Special Questions on Koreans” (U.S. National Archives).
慰安婦決議案提出者マイク・ホンダ議員への公開質問状
http://www.tamanegiya.com/maikuhonnda19.4.1.2.html
平成19年2月16日
史実を世界に発信する会
代表 加瀬 英明
URL http://www.sdh-fact.com
「太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦はすべて志願か、両親に売られたものばかりである。もし女性達を強制動員すれば老人も若者も激怒して決起し、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう」(朝鮮人軍属の証言)などの情報は、正しくないということを貴殿は証明する義務があるということである。さもないとアメリカの公式記録を貴殿は最初から価値なき虚偽文書とみなしていることになるからである。
The second can be found in depositions taken from three Korean civilian employees of the Japanese army, who stated the following: In the battle zones of the Pacific War, the Korean comfort women we met were all either volunteers, or women who had been sold by their parents. If the women had been victims of coercion, all the Koreans both young and old would have risen up in rage, and regardless of whatever retaliation, killed the Japanese (from Composite Report on Three Korean Civilians, List No. 78, dated 28 March 1945, “Special Question on Koreans” in the U.S. National Archives).
この3つの引用文を見比べてみて、腑に落ちない点があるので、それをまとめてみた。
著者(敬称略) | 出版年月日 | 引用文献の英語タイトル |
---|---|---|
秦郁彦 | 1999/06/30 | Composite Report on three Korean Navy Civilians List No. 78, dated 28 March 1945, "Special Questions on Koreans" (U.S. National Archives). |
尾形美明 | Composite Report Three Korean Civilians List No. 78,” dated 28 March, 1945, “Special Questions on Koreans (U.S. National Archives). | |
加瀬英明 | 2007/02/16 | Composite Report on Three Korean Civilians, List No. 78, dated 28 March 1945, “Special Question on Koreans” in the U.S. National Archives). |
- three かThreeか?
- Navyが原文にあるのかないのか?
- Civilians List No. 78 か Civilians, List No. 78か?(カンマがあったほうが自然ではあるが)
- 3名に対する尋問調書なのに、"composite report(尋問調書集約報告)"というタイトルは不自然。
著者(敬称略) | ___ | 引用文 | |
---|---|---|---|
秦郁彦 | 英語 | なし("prostitutes", "volunteer", および"direct conscription"の各語が原文中にあることを示唆) | |
日本語 | 太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦は、すべて志願者か、両親に売られた者ばかりである。もし女性たちを強制動員 すれば、老若問わず朝鮮人は憤怒して立ちあがり、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう。 | ||
尾形美明 | 英語 | In the battle zones of the Pacific War, the Korean comfort women we met were all either volunteers, or women who had been sold by their parents. If any of the women had been victims of coercion, all Koreans, young and old, would have risen up in rage, regardless of whatever retaliation, and killed the Japanese. | |
日本語 | なし | ||
加瀬英明 | 英語 | In the battle zones of the Pacific War, the Korean comfort women we met were all either volunteers, or women who had been sold by their parents. If the women had been victims of coercion, all the Koreans both young and old would have risen up in rage, and regardless of whatever retaliation, killed the Japanese | |
日本語 | 太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦はすべて志願か、両親に売られたものばかりである。もし女性達を強制動員すれば老人も若者も激怒して決起し、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう |
- 秦の引用文中で示唆されている"prostitutes"および"direct conscription"が、尾形引用文、加瀬引用文のいずれにも見当たらない。
- 秦引用文と加瀬引用文(日本語)は英語原文からの翻訳がほぼ同じであるの対し、尾形引用文と加瀬引用文(英語)は英語原文に細かな差異が複数ある(原文を引用するだけの作業で、これだけの差異が単なるミスとは考えにくい。)
- 英語原文が不自然である。
-
- the Korean comofort women we met − 1945年に"comfort women"という表現があったのか? 原文の"comfort women we met"は"comfort women we had met"であろう。
- either volunteers, or women - カンマは不必要
- victims of coercion - 「強制であることの被害者」というのは意味がわからないし、 「強制動員」という訳にはならない。"victims of abduction" とか "victims of kiddnapping"なら理解できる。
- regardless of whatever retaliation - 節として不完全 they recieved などがつくはずである。
以上のような疑問から、このようなタイトルがついた、上記の内容のような文書があるかどうかを、2007年7月17日に、メールでNARAに問い合わせてみた。(問い合わせの英文はこちら)
2007年の8月14日(日本時間8月15日)にNARAより返事が来たが、その内容は以下の通りであった。
Date: Tue, 14 Aug 2007 14:26:20 -0400
From: "WXXXXX MXXXXXX"
To:
Subject: Composite Report
----------------------------------------------August 14, 2007
(整理番号)
Dear Stiffmuscle(原文はわたしの本名),
We were unable to locate the report among the records in our custody.
Sincerely,WXXXXX MXXXXXX
Modern Military Records
Textual Archives Services Division
NARAが保管している記録文書の中にその報告書は見当たらなかった。
ちなみに、「太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦は」を検索語にしてGoogleで検索した結果、裁判の根拠資料、新聞記者のブログ内で言及、県議会議員の発言の根拠資料、としてすでに用いられていることがわかる。
Personalized Results 1 - 10 of about 137 for 太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦は. (0.05 seconds)
http://www.google.com/search?q=%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E3%81%AE%E6%88%A6%E5%A0%B4%E3%81%A7%E4%BC%9A%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E4%BA%BA%E6%85%B0%E5%AE%89%E5%A9%A6%E3%81%AF&sourceid=navclient-ff&ie=UTF-8&rls=GGGL,GGGL:2006-22,GGGL:ja
−原告 石川の教育を考える県民の会会長 諸橋 茂一
http://www.kardia.biz/~jiyuu-shikan/042609kono.html−「史実を世界に発信する会」は実に偉い 阿比留瑠比記者のブログ国を憂い、われとわが身を甘やかすの記 2006/10/22
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/61303/−県議会の活動 平成19年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/200100/www/html/gijiroku/0706/1906-03.html尾崎太郎県議
今月号の「正論」で、茂木弘道氏が2件の米軍公式記録を紹介しています。米陸軍インド・ビルマ戦線所属の戦争情報心理班の報告は「慰安婦とは売春婦にすぎない*1」、「月平均1500円の総収入を上げ、マスターに750円を返還する*2」とあり、朝鮮人軍属の証言として、「太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦は、すべて志願したか両親に売られた者である。もし女性たちが強制動員されれば、すべての朝鮮人は老人も若者も激怒して決起し、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう」とあります。ちなみに、日本の軍曹の月給は30円で、慰安婦は実にその25倍を稼いでいたことになります。
もちろん、慰安婦は日本人も多数いましたし、戦後、焼け野原になった我が国で、米兵相手に春をひさぐ女性がいたことは周知の事実であります。日本人として愉快な話ではないですが、だれかの責任を追及するようなたぐいの話でもないでしょう。
原文が公開されておらず、NARAがその存在を確認していない文書が、このような形で事実として流布している現状は、各人の主張云々以前に、事実に基づいて議論するという万人が納得する議論への姿勢を根底から破壊する危険性を秘めている。
再度申し上げる。秦郁彦氏、尾形美明氏、加瀬英明氏においては、この文書を早急に公開することを切に希望する。
この記事を読んでいただいて、ご賛同いただける方は、ご自分のブログで紹介していただくなど、多くの方に知らせていただけると有難い。 ご協力のほど、よろしくお願いします。
関連エントリー(元記事)
−どくしょのじかん 1
http://d.hatena.ne.jp/Stiffmuscle/20070716/p1
−どくしょのじかん 12
http://d.hatena.ne.jp/Stiffmuscle/20070815/p1