国連人権規約委員会の最終報告書(Concluding observations)の内容

日本に死刑廃止検討求める 国連委、慰安婦でも初勧告(msn産経 - 2008年10月31日)

 国連のB規約(市民的および政治的権利)人権委員会は30日、日本政府に対し死刑制度の廃止を「世論調査と関係なく、前向きに検討すべきだ」と勧告する審査報告書を発表した。同委員会の対日審査は1998年以来、10年ぶり。

 慰安婦問題についても「法的責任を認め、被害者の多数が受け入れられる形で謝罪すべきだ」と初めて勧告した。同問題については女性差別撤廃委員会、拷問禁止委員会に続き、関連する人権条約の管轄機関による勧告が出そろったことになる。


国連の自由権規約委員会の対日審査の最終報告書

から「慰安婦」に関連する部分を抜き出してみた*1

22.  The Committee notes with concern that the State party has still not accepted its responsibility for the “comfort women” system during World War II, that perpetrators have not been prosecuted, that the compensation provided to victims is financed by private donations rather than public funds and is insufficient, that few history textbooks contain references to the “comfort women” issue, and that some politicians and mass media continue to defame victims or to deny the events. (arts. 7 and 8*2

22. 本委員会は、貴締約国が第二次世界大戦中の「慰安婦」制度に対する自らの責任を未だに認めていないままであること、加害者が処罰されていないままであること、犠牲者に支給された補償金は公的な基金ではなく民間の寄付を財源としたものであり、かつ、補償金が不十分であること、「慰安婦」問題について言及している歴史教科書がほとんどないこと、被害者を中傷もしくは被害者の体験を否定する政治家やマスメディアが存在することに懸念を表明する。(第7条および第8条)


The State party should accept legal responsibility and apologize unreservedly for the “comfort women” system in a way that is acceptable to the majority of victims and restores their dignity, prosecute perpetrators who are still alive, take immediate and effective legislative and administrative measures to adequately compensate all survivors as a matter of right, educate students and the general public about the issue, and to refute and sanction any attempts to defame victims or to deny the events.

貴締結国は、法的責任を認めなくてはならす、大多数の被害者が受け入れることができる方法で「慰安婦」制度について疑われることがないほど完全に謝罪しなければならず、被害者の尊厳を回復しなければならず、存命中の加害者を訴追しなければならず、正義の問題としてサバイバー全員に適切な補償を行なう法的措置および立法措置と直ちに実行しなければならず、児童・生徒・学生および一般大衆に「慰安婦」問題について教育・啓蒙しなければならず、被害者を中傷もしくは被害者の体験を否定するあらゆる試みに対し反駁し、法的に処罰しなければならない。


日本政府はシカトを決め込むつもりだろうが、これだけ強い勧告が出た以上、反応ゼロというわけにはいかない。これで国際社会の勧告が終わるわけではなく、さらに強い権限を持った勧告が出されるであろうからだ。
麻生総理は早々に衆議院を解散して、国民の信を問うていただきたい。いかなる理由があろうとも、今すぐにでも解決できうる問題を解決しないのは国民に対する裏切りである。



*1:この最終報告書では、

  ・追加議定書の批准、
  ・パリ原則に基づく第三者的な人権監視組織の設立、
  ・「公共の福祉」と人権の関係の見直し、
  ・死刑制度と死刑囚の扱いに対する見直し、
  ・女性の離婚後の再婚禁止期間・結婚年齢の不平等の是正、
  ・男女間の差別の根絶、
  ・レイプ・性暴力に関する法の見直し、
  ・ドメスティック・バイオレンスに関する法の見直し、
  ・代用監獄の見直し、
  ・外国人研修生への差別の根絶、
  ・入国管理および難民受け入れ法の改正、
  ・公職選挙法の見直し(個別訪問の禁止見直しなど)、
  ・婚外子の差別の根絶、
  ・ホモセクシュアルへの差別の改善、
  ・在日韓国・朝鮮人に対する年金未支給の撤廃、
  ・韓国・朝鮮人学校に対する差別の是正、
  ・アイヌ琉球民族の先住民として公式に認め、言語や文化の伝承の促進、
  通常の学習過程でそれぞれの文化や歴史を教育、

など非常に多岐にわたる勧告がなされている。

*2:■「市民的及び政治的権利に関する国際規約」

第7条(拷問・虐待・残酷な刑の禁止)
 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

第8条(奴隷・強制労働の禁止)
1 何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。
2 何人も、隷属状態に置かれない。
3(a)何人も、強制労働に服することを要求されない。
 (b)(a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。
 (c)この3の規定の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。
  (i)作業又は役務であって、(b)の規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によって抑留されている者又はその抑留を条件付きで免除されている者に通常要求されるもの
  (ii)軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務
  (iii)社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される役務
  (iv)市民としての通常の義務とされる作業又は役務