どくしょのじかん 14


秦郁彦『「慰安婦伝説」−−その数量的観察』(「現代コリア」1999年1・2月合併号)[以下、『伝説』と略す]
では、先のエントリーで示したように、8項目を「箇条的に取り上げ」ている。そのうちの、(7)は次のような下りで始まる。

7、主要各国の軍隊における性事情は第二次世界大戦時の日本軍と相似している−−


 このように表現すると「だからといって、日本軍の慰安婦を正当化することはできない」という反論が出てくる。しかし、そういう論者でも、未成年の仲間とタバコを吸ったわが子だけが学校から処罰を申し渡されれば、「なぜ他の子は放任するのか」と抗議するにちがいない。そもそも、未成年の喫煙は法律で禁じられているが、ザル法も同然で警官が取り締まる例はほとんどない。売春防止法違反もそれに近い。


『伝説』、40ページ。強調は引用者。


処罰を受けるというのだから、高校生のことを頭に描いておられるのだろうが、

    1. 一斉に喫煙が見つかって、処罰が違うということが頻繁にあることなのか?
    2. もしあったとしても、抗議する前にタバコを吸った自分の子どもを叱らないのだろうか?

それに、未成年者喫煙禁止法 と 売春防止法 を「ザル法つながり」で同列に扱ってもよいのだろうか?


他にも、この項目には「戦争にはレイプはつきもの」(41ページ)という信じがたいほどに無神経な表現もある。
また、この論文でも、他国の軍隊の例としてベトナム戦争時の米軍の売春施設について、先駆的なフェミニストでいまも活動している Susan Brownmillerの"Against Our Will"を引き合いにだしているが、次回は、これを俎上に上げてみたい。フェミニストは大嫌いなようにみえる秦先生だが、実はそうでもないのかな?

Against Our Will: Men, Women, and Rape

Against Our Will: Men, Women, and Rape